典型を作ること自体が、個を逆に生かしていることだというふうに私は思っています
2009年10月20日放送 NHK総合 爆笑問題のニッポンの教養
カブキズム
比較演劇学 河竹登志夫さん
歌舞伎の今の演技というのは、そういう生き生きとしたというかね、行儀の悪いお客によって作られたと思うんですよ。舞台のほうでは、その反応を見ながら、少しでも良くしよう、そういう交流でできたんだと思うんです。そういう意味では、全くの大衆的なエンターテイメントだったんですね。
歌舞伎ぐらい、何でも取り入れちゃう、そういうどん欲な胃袋だと思うんですよ。
型に入って、型に出るとか、いろんな言葉がありますよね。歌舞伎の場合も、何にもないところから型を作って、その型を体から体へ継承する。継承するって、ただそのままじゃいけないんで、その中から、自分の個性的なものを加えて、型を膨らませていくということの連続なんですよね。
歌舞伎作者の場合、黙阿弥がそうでした。教えがありまして、三親切という言葉があるんですよ。役者に親切、見物に親切、座元に親切、これは同じことですけど、作者に親切ということは一言も書いてない。実は、その三つを生かすことが、自分の宿命であり、役目なんだと。それができるのは、自分が生きることだということだと思うんですよ。ですから、型も個を殺しているというのは、一つの自分の典型を作ることだと思うんですよ。これは私の解釈ですよ。典型を作ること自体が、個を逆に生かしていることだというふうに私は思っています。
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