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先進各国はあまり切り上げを迫らない方がいいと指摘していたそうです。切り上げた後に危機に陥ると、先進国の責任にされてしまう

2010年3月1日放送 NHK BS1 経済最前線

ハーバード大学 ケネス・ロゴフ教授
欧州の財政危機はギリシャだけではない。ポルトガル、アイルランド、スペイン、さらにラトビアなど東欧諸国も問題だ。国によってはIMFにより救済は避けられず、デフォルトすらしかねない。
個人の貯蓄率は下がり、企業の生産性は低いまま。人口構成もいびつです。過去の金融危機は多くがいわば低温やけどで、長年かけて表面化しました。日本が財政再建に乗り出す必要があるのは、間違いありません。
低利の公定歩合は、そもそも銀行に対するいわば贈り物でした。これを引き上げたからと言って、政策金利を上げると見るのは早合点です。年内どころか、マーケットが予測している来年前半も利上げは無理でしょう。日銀は2002年にゼロ金利政策を解除しようとして失敗しました。FRBが近い将来、利上げしようとすれば、同じ問題に直面します。
中国はいずれアメリカを抜いて、世界最大の経済大国になります。しかし、金融危機は避けようはありません。住宅価格の上昇度合いで危機を予測できますが、このままでは、10年以内に中国で金融危機が起きる可能性は高いと思います。

他の国の金融危機やこれまで金融危機とは違う。こうした思いこみがあれば、それは危機を繰り返す愚かな行動だと訴えるロゴフ教授。謙虚なまなざしで、経済を直視することこそが危機の再発を防ぐ最良の手段だと説いています。

ロゴフ教授は中国が危機に直面することを前提に人民元について、いずれは切り上げが避けられないので、先進各国はあまり切り上げを迫らない方がいいと指摘していたそうです。切り上げた後に危機に陥ると、先進国の責任にされてしまう。ここは一歩引いて、静観すべきだということなんですけれども、こういう面でもしたたかな外交姿勢が必要だと感じます。

みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト 上野泰也さん
アメリカについては、これは日本の経験からもそうなんですが、大きなバブルが、住宅やクレジットのバブルが崩壊した後のバランスシートの調整、経済の構造の調整が必要な、一種の療養期間に入っています。そのことは、雇用の面で見ても、新しく雇用者数を増やしていこうというところまで結びつかない、こんな状況がなおしばらく続くと思いますので、アメリカの回復力の弱さと言いますか、構造不況の根深さを反映する結果になりまして、おそらくは株安債券高に反映されてくるというふうに考えています。

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