始まったばかりの議論ですが、投資家の利益追求と適切な競争を通じた消費者保護とのバランスは今後も重要なテーマとなりそうです
2017年5月16日(火)Newsモーニングサテライト
野村グループ 前田秀人さん
S&P500企業の自社株買いは15年をピークに減少、今年も4月下旬までの時点で昨年の同じ時期と比べて15%減り、12年以降でも最低水準となっています。要因としてはFRBが利上げ局面に入る中で、資金を借りて行う自社株買いが減少していることや株価が割安とは言えない水準となっていることが考えられます。
自社株買いを積極的に行っている各社で構成されるS&P500ハイバック指数とS&P500指数のパフォーマンスを年初から比較すると、ハイバック指数のほうが下回っています。自社株買いを積極的に行える環境ではなくなっている中で、成長に向けた投資よりも自社株買いを優先させている企業に対しての評価が厳しくなっている可能性が高いといえます。一方で、自社株買いが減っても1-3月期の1株利益が増加しています。今後は本業の利益拡大による業績が株価を支えると見られます。
世界的な個人投資家に対する金融商品の透明性向上の流れを受けて、ブラックロック、バンガード、ステートストリートに代表されるインデックス投資の運用会社の資産が急増しています。その結果、昨年6月に行われた調査では大手3社のいずれかがS&P500社のおよそ88%において筆頭株主となっています。
コモンオーナーシップといわれる問題です。資産運用会社が特定の業界において、複数の企業の株主となった場合、それぞれの企業が競争せず、業界内の利益の最大化を図ろうとし、最終的には消費者のコストが転嫁されるのではという問題です。実際に司法省が航空業界のコモンオーナーシップによるチケット価格上昇の可能性を調査したと報じられています。また、ある大学の論文でも運用会社による株式保有比率の引き下げや投資先を業界内で1つの企業に限定することなどを提言しています。
大手3社は現在の潮流の反するものであり、個人投資家の利益を侵害するものであるとしています。また、投資対象を制限すれば、もはやインデックス運用とも呼べないと反論しています。始まったばかりの議論ですが、投資家の利益追求と適切な競争を通じた消費者保護とのバランスは今後も重要なテーマとなりそうです。
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